シドニーから続くイライラを、中国戦でのモヤモヤを、すべて吹き飛ばす快勝劇。WBC2連覇に挑む野球日本代表は、宿敵・韓国を14-2という大差の7回コールド勝ちで粉砕。アジア最大のライバルを思いがけない圧勝で破り、2次ラウンドへの進出を決めてくれました。土曜の夜という特別な時間に、素晴らしいものを見せてくれた代表選手たち。こんな気持ちのいい夜を過ごせるなんて、僕らは本当に幸せ者です。野球のある国に生まれて良かった!!
それは至福の1時間でした。2回の表裏を消化しただけで時計の針はすでに20時を回っていました。果てしなく長い攻防。9回を消化するのに5時間はかかろうかというペースのロングゲーム。しかし、僕の目は、心は、一瞬も休まることはありませんでした。1球に深呼吸し、1スイングに恐れを抱き、選手の一挙手一投足に魂が震えました。正直、耐え切れないと思いました。このドキドキとワクワクに5時間もさらされたら、どうにかなってしまうと思いました。日本プロ野球ではテンポアップのために今季から投球までの時間を15秒に制限するという話がありますが、今日のような試合をそんなテンポでやられたらこっちが倒れてしまいます。心を落ち着かせるために、何度も深呼吸し、勢いよく杯を空け、ときに目をつぶりながら、やっとの思いで見守ったくらいなんですから。
喜びが頂点に達し、意識が飛びかけたのは2回表、男・村田の第2打席。日本が5-2とリードしなお一死1・3塁の場面、打席に向かった男は北京の小太り野郎とは別人でした。韓国の先発・金の投じるボールをカットで粘る男の表情は、終始変わらず落ち着いていました。スライダーを、ストレートを、チェンジアップを、男のスイングは少しづつ自分の間合いで捕らえていき、金は投げる球を失っていきました。投手を見据え悠然とバットを構える男が、剣の道を極めた侍に見えました。そして9球目。低めのチャンジアップをすくい上げた男の打球は、緩やかに舞い上がります。打った瞬間に犠牲フライは確定だとわかる、大きく上がったその打球。高く高く高く上がり、ゆっくりゆっくり落ちてくる。「入りそう…」「入る…?」「入る!?」「入れ!」「入った!!」打球を追いながら、こんなにゆっくりものを考えられるなんて。わずか1秒か2秒かの滞空時間が永遠の夢のように思われたのです。
打球がレフトスタンドに飛び込んだ頃、男は悠然と一塁を回っていました。一斉に立ち上がる一塁側の日本応援団。それを背中に感じながら右腕を突き上げる男。忘れられない光景でした。誰が音頭を取らずとも、揃いのグッズを持たずとも、僕らの心はこうしてひとつになれるじゃないか…そんな素晴らしい一体感でした。少しだけ涙がこぼれました。
結局試合は、7回10点差をつけたことで日本のコールド勝ちとなりました。大味な点差と、短縮された試合。高額なチケットを買ったお客にしてみれば「損をした」と考えてもおかしくない状況です。しかし、今夜に限っては損したなんて思うお客はいないでしょう。いやむしろ、お釣りがくるほどの満足感を得たに違いありません。楽しかった。嬉しかった。本当にありがとう野球日本代表。
…さぁ、褒めるのはここまで。喜ぶのはここまで。
世界一を奪う戦いが美しく終わったとき、もう一度この喜びを噛みしめましょう。その日を最高の気分で迎えるために、まずは勝て!ただひたすらに勝て!再び世界一へ!
…ということで、早速テレ朝が7日に中継した「WBC1次ラウンド 日本VS韓国戦」をチェックしつつ、勝利の余韻に浸っていきましょう。
◆やれば出来るじゃないか!残りの試合もこんな感じでやっちゃって!
勝てば2次ラウンド進出が決まる韓国戦。もちろん負けてもまだチャンスはあるわけですが、そんなこと考えるヤツは代表には要りません。やる以上は勝つ。いつ何時誰にでも勝つ。特に韓国には絶対に勝つ。そんな想いを抱え、すべての野球ファンが開戦のときを待っていました。
初回の先頭打者はイチロー。強化試合から続く不振で、世間も騒がしくなっていました。しかし、本当の野球ファンの中には揺ぎ無いものがあったはず。イチローはただのグッドバッターではない、レジェンドなのだと。信じよう、信じられる。イチローを疑うようになったら終わりだ。僕らの国にはそれだけの強い想いを預けられる天才がいるのだという喜びを、打席に立つイチローを見ながら僕は感じていました。何の言い訳も用意せず、何の予防線も張らずに、日本の代表を見守れる競技はそう多くありません。野球はそんな数少ない競技のひとつ。ただひたすらに「勝て!」「打て!」と念じていれば、彼らはそれに応えてくれるのです。

